TDA1543で簡易型DAC


DAIレシーバを製作するとき10cm×7.5cmの感光基板を使ったのですが、スペースがちょっと余りました。
そこで、DAIの動作確認用として、簡単なD/Aコンバータ部も作ることに。

今回使うのは、フィリップスのTDA1543。
古典的なマルチビット16bitD/AコンバータICで、もともと廉価なCDプレーヤーなどに使用されていたものです。
古い上にもともと素性のよいICではないので、性能を最大限に引き出そうとすると大変面倒くさいのですが、とりあえず音を出す程度の使い方なら非常に外付け部品が少なくて済むため今回採用します。
TDA1543は共立で売られているので、意外に調達は簡単です。

DAC1543x3

回路図(png)
部品配置図(部品面より、png)
感光基板フィルム(部品面より透視、720dpi、png)
DAI基板も1枚のフィルムにしてあります。

ケースに入れて、電源はHDD用コネクタから取れるようにしておきました。
3パラにできるよう構成したのですが、そんなことするよりコンデンサを積むスペースを多くとった方がよかったかもしれない、とは後で思いました…

部品表

番号 品名 記事 入手先
IC30 7808 各社相当品
IC31〜33 TDA1543 TDA1543Aの採用はDAI側に要加工 共立
D30 10DDA10等 汎用整流ダイオード 1A
R30〜R32 1.5KΩ 1/8〜1/4W
R33〜R34 1.5KΩ 音響用推奨 1/8W以上
R35 1KΩ 多回転VR バーンズ3296W-1-102、または相当品
R36 22KΩ 1/8〜1/4W
C30 470uF 電解コンデンサ 音響用推奨 10V以上
C31 1000uF 電解コンデンサ 音響用推奨 16V以上
C32 0.1uF(104) 積層メタライズドフィルム MMT,MTF,ECQV等
C33〜C34 3.3uF 音響用推奨 またはMMT,MTF等
C35〜C36 0.1uF(104) 積層メタライズドフィルム MMT,MTF,ECQV等

TDA1543とTDA1543Aは入力フォーマットが違いますので、そのまま差し替えはできません。DAI側をいじって右詰め24ビットに変更するとTDA1543Aが使えるようになります。
C33とC34はカップリングコンデンサで、音質に大きく影響します。
通常は3.3uFでも差し支えないと思いますが、低音を伸ばすために〜22uFくらいの範囲で増やすのもよいでしょう。
フィルムコンデンサがお勧めですが、もし電解コンデンサを使用する場合は出力端子に近い側をマイナスにしてください。

TDA1543は1〜3個の間で任意の個数を装着して使用することができます。1個だけ装着する場合はSJ30をハンダで短絡して、IC31またはIC33の場所に装着してください。2〜3個の場合はどこに挿してもよく、SJ30はオープンとして使います。

コネクタおよび半固定抵抗

CN30 SERIAL IN
DAI基板で得たシリアルデータを入力します。RMCKは使用していません。

CN31 +12V IN
アナログ電源入力です。

CN32 AUDIO OUT
アナログ音声出力です。少し出力振幅レベルが低いので、アンプのボリウムを少し上げて使ってください。

R35 OFFSET ADJ
TDA1543アナログ出力に与えるバイアス電流量を調整します。

TP30 OFFSET
バイアス電圧を観測する端子です。

調整

まずTP30〜GND間に電圧計を接続し、電源を入れて無音状態にしてください。
次にR35を回し、電圧が4.3Vを指すように合わせて調整完了。
TDA1543の温度が上昇すると電圧も降下していきますが、電圧値は厳密でなくてもよいようには設計してあります。
できればTDA1543の頭に放熱板を貼り付けたほうがいいのかもしれませんが…
耳のいい方は、4.3Vに調整した後で歪み感の少ないところを探ったりしてみるとか。
(私はそこまで違いがわかりませんでしたが)

オフセット調整のしくみ

TDA1543の出力は基本的に、吸い込み方向へ0〜2.3mA(Ifs,IDAC)の振幅があるとされています。
また出力端子にはバイアスとして使える半固定の電流源が内蔵されており、それは出力端子をVDD方向に吊り上げるような形で接続されています。
ですので、その半固定電流源の値を適切に調整してやれば、吸い込み方向に偏ったオフセットを打ち消して±1.15mAの電流出力を得られるようにすることが可能なわけです。
しかもバイアス電流は最大5mA(Ibias)くらいまで増やすことができるので、出力端子につながっているのが抵抗1本という変則的な負荷であっても適切なバイアスを与えることができます。

で、そのバイアス電流はVref端子に抵抗を1本接続することにより決定されます。
7番ピンの内部には2.2V(Vref)の電圧源が存在すると考えることができ、そこに抵抗を接続することによって電流(Iref)を引き出すと、その2倍(Abias)のバイアス電流(Ibias)が出力端子に加えられます。

抵抗1本でI-V変換をするとき、当然ながら出力電流の値によって出力端子の電圧は大きく振られます。TDA1543はそのような使い方をしても極端に歪 むことがない設計にはなっていますが、それでも電圧スイングは1.8V〜[VDD-1.2]Vの範囲(VOC-DC)に収めなくてはいけません。
電源電圧が8Vで無音のとき、出力端子の電圧が可変範囲の中心値である4.3Vになっていれば、理論的には好ましいわけです。
4.3Vにセットするのに必要なRbiasの値は計算で求められますが、VrefやAbiasは個体差が結構あるので、最終的には半固定抵抗で追い込めるようにしておくとよいでしょう。
また、温度が上がると電圧が下降していく傾向があるので、そのあたりも見込んで余裕を持たせる必要があります。

鳴らしてみる

太い音ではあるのですが、もんにょりです。
あと、ヴォーカルが出てきそうで出てこないので、なんかスピーカーの前で前のめりになる感じ。
TDA1543は結構人気のあるDACなので使いこなせば化けるのかもしれませんが、なんか道は遠そうです。


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